2009年11月
石川町から坂を上がって行って、だんだん細い路地の中に入っていった。
細い路地は、私道が入り組み、まさに迷路の中に迷い込んだようだった。私道だから本当は通ってはいけないのだろうが、とりたてて咎められるようなことはない。
坂が急なところは階段になっている。絶対に車は入って来られない。
階段の途中に、セメントでわずか10センチ幅の手作りスロープが作られている。明らかに後付けのデコボコしたスロープだ。
そこをスクータに乗ったお兄ちゃんが片手運転でスロープの上を通り抜け、階段をクリアしていった。みごとだった。
碁盤の目のように道路が整備され、中心地域では幅100メートルにも及ぶ道路がある名古屋で生まれて育った人間としては、横浜の山の手の路地は脅威の世界だ。
迷路を抜けると、小高い岡になっていて視界が開け墓地があった。根岸共同墓地というところらしい。振り向くとランドマークタワーも見える。
「死んだらここに入れてもらう?」
とまみちゃん。もちろん、僕が死んだらどうするのかという問だ。
「いやあ、どうかな」
横浜に引っ越してきて10ヶ月が経過しようとしているが、まだ自分は、横浜に骨を埋めるという気にはなり切っていないことだけは分かった。
米軍の宿舎を回りこむと高級住宅街だった。九十九折の坂を下り、根岸駅を目指した。
昔はこの坂からバーッと海が見えたのだと思う。
俳句の世界では
「○○や、根岸の里の侘び住まい」
というのがあるらしい。○○のところに季語になる言葉を入れるだけで俳句になる。もちろんそういう俳句は悪い例ということだが。
根岸の里・・・それに侘び住まい。昔は、たぶん、静かな山と磯の間の、少し取り残されたような漁村だったのか。
もちろん今は都会になっているけれども、山や森が多く、今でもどこか田舎の風情があってなかなか面白い。
今日の日曜日は、昨日の続き。
バイクで根岸の「海の見える丘公園」と「横浜市民ヨットハーバー」を見に行くことになった。歩いていくのと違い、あっという間に着いた。
横浜市民ヨットハーバーはまわりをパイルの防波堤に囲まれたハーバーだ。ブイに繋留するようになっている。
船までは小船で行き、小船から船に乗り込む仕組みだ。小船をブイに舫い、帰ってきたら小船に乗り換えて桟橋まで戻ってくるということらしい。勉強になった。
根岸にはニトリがあるので、せっかく来たから椅子のブーツを買った。低反発のマットも調べた。面白かった。
ものすごく安い。隣のヤマダ電機では先日もWindows7アップグレード券付きのノートパソコンを購入したばかりだ。
デフレだと思う。ただ、ものが売れないといっても、このふたつの店舗には人がたくさん入っていた。
天気は晴れだ。風もない。
「マリーナに行こう」
ということになり、駐車場に向った。
まみちゃんが選んだのはカブだった。気温が低いので、なかなかエンジンが掛からない。今朝見た夢のとおりだ。掛かったと思ったら、シュルシュルポンといって止まる。ようやく掛かったエンジンだったので、もったいないから回転を上げた。
「ぶいーーーん」
エンジンがうなりを上げていた。まみちゃんは空ぶかしでエンジンを温めている。
「ぶいーーーん」
まみちゃんは何を思ったのか、そのまま、ローにギアを入れた。そのとたん、カブは勢い良く飛び出し、棹立ちになる!まみちゃんは急ブレーキをかけ、カブとまっさかさまになって道路に転倒した。その際、胸を強打した。幸い、大怪我にはならなかったが、かなり痛かったらしい。アクセルで暖めるのではなく、「チョーク」と伝えればよかった。
その後、保田に行った。観音崎沖でも波がなく、穏やかな秋の東京湾だった。まみちゃんは腕や肩が痛いので、ボートがポンツーンから離れてもロープを引っ張れない。繋留でやり直しをしたのは久しぶりだった。ひとりで離着岸の練習もしなければいけないかも。
連休で保田はにぎわっていた。僕たちが食べたのは、蒸したサツマイモ。保田とは関係がない。もっとも、昼は食べすぎなので、このくらいがちょうどいいかも。みやげに干物だけは買った。
保田から出航する際に、防衛大学のヨット部といっしょになった。まだ18〜19歳なので、うちの娘のみさきと同い年だ。顔つきがまだまだ幼い。それでも、動きはキビキビとしていて気持ちがいい。ルキア号も出発しようとしたら、気がついて、ボートをポンツーンから押し出してくれた。ありがとうございました。
しばらくいっしょに併走したが、やはり動きがすばやく、気持ちのいいヨットだった。この子達が近い将来、日本を護ってくれると思うと心強い。
海も空いていたし、15ノットまで引っ張って帰って来た。東京湾も行っていないところがだんだん少なくなってきた。
いつもならしばらく船の中で過ごすのだが、今日は寒い。
ルキア号にはエアコンはない。あるのはオイルヒーターだけ。あまり暖かくはないが、安全でけっこう気に入っている。ボートには燃焼系のヒーターはご法度だ。インテリアにチーク材を使っているため。熱線式のヒーターも危ない。それでオイルヒーターなのだが、去年は冬でもかなり船内で宿泊したので、相当役に立った。昨年、ヤマダ電機で購入したものだ。
横浜のマンションは始めての冬を迎える。まみちゃんはマンションにいると、足元がなんとなく寒いというので、船にあったオイルヒーターをマンションに持っていくことになった。
マンションのインバーター式のエアコンの暖房はどうも気持ちが悪い。
バブルの頃はアメリカ製の薪ストーブに木をくべて暖をとっていたこともある。じっと火を見つめているだけで時間が流れ、気持ちも良かったけれど、実際のところ、あれは不便だ。今はそんな無駄っぽい空間に住む余裕もない。
東京では床暖房の高層マンションだったけれど、開口部の大きな窓から冷気が伝わり、なんとなく足だけが暖かいだけで、いつも寝っころがっていた。
めぐりめぐって、結局、古くて安上がりでこなれた暖房器具に戻るのか・・・。
横浜ベイサイドマリーナの桟橋を、オイルヒーターを抱き抱えて歩いていると、桟橋ですれ違ったヨットマンが、オイルヒーターを見て
「オイルヒーターという手がありましたね」
とおっしゃっていた。
手紙には「全員優秀な成績で合格!」とあった。やはりあの試験で不合格になるほうが難しいのだと思う。これで特に更新がないため、一生涯、3海特の資格があることになる。要領がだいたいつかめたから、2海特へのステップアップは直接受験することにしようと思う。
あとは、IcomのVHFトランシーバーの箱の中に入っていた「無線局開局の申請書」に必要事項を記入して、申請を行い、無線局の開局を待つだけになった。これにもまた時間がかかりそうだ。やれやれ。
アクアホリックさんに詳しくトローリングについてコメント欄で解説していただいた。ありがとうございます。
相模湾に出て、ちょっと試してみようかなとも思った。
インターネットでいろいろ調べるとやはり釣りは奥が深い。軽い気持ちではなく、いろいろ準備をして出かけたくなったはいいが、肝心の海がちょっと荒れていて今週は船を出す気にはなれなかった。まあ、じっくりと勉強をしながら春を待つのもまたいいのかなと思う。
明日からは、また会津は三春町の「やわらぎの湯」に行って湯治をしようと思っている。今回はショートプログラムですぐに帰ってくる。
実際のところ、今は横浜市内で
1 ラジウム岩盤浴
2 超高濃度ビタミンC療法
が受けられるようになっているので会津まで行くことはないが、駐車場の守衛さんや調理場のスタッフと
「また来る」
と約束をしたし、顔を見たくなったので行きたくなった。ほんとうはバイクで行きたいが、この寒さじゃあ無理だろう。
ニンニンさんに先日見せてもらったトローリングの道具に触発されて、ケンケン釣り(?)の道具を購入した。釣具店の「ポイント」では店員のかっこいいお兄ちゃんがいつも対応してくれる。たまにしか行かないが、僕達のことをよく覚えていてくれるのが嬉しい。
釣りの道具について、僕たちに詳しく説明しても
「ポカン」
とした顔をするので、気を利かせて、この時期のトローリングに合致したている物を出してくれたんだと思われる。ついでに、場所もコーチしてくれた。
僕達は釣りの道具は購入するのだが、本気で研究する根性がないのでいつも釣果はさっぱりだ。本来なら釣り船に乗って勉強すべきだが、それだけの意気地もない。それでも、ボートを出して釣った釣りは、どんな釣りでも
「たいへん面白かった」
と、満足して帰る。
本当はロングクルーズ派なのに、天候、仕事、それと、まみちゃんは今や乳ガン治療マニアともなった健康オタク生活の科目をこなすのに興味があって、なかなかタイミングが合わずに、ロングクルーズにでかけられない。
といって、いつもそのあたりの散歩とかばかりでもルキアがかわいそうだ。それに、そうそうランチクルーズばかりやっているわけにもいかない。そもそもランチくるーずといっても、健康オタクとなったまみちゃんの目にかなった料理が食べられるレストランがそうそうあるわけでもない。
そんなとき、トローリングは大好きなクルーズと釣りの両方が楽しめることがわかり、ちょっと面白いと思う。4ノットの世界は極めて静かで、思いのほか快適だった。
しかし、アクアホリックさんの
「20kgクラスが釣れたら危険」というご指摘はワクワク感があるとともに、怖くもあるな。今度はもうちょっと仕掛けを固定する方法について対策を立てておこう。
トローリングについては
「青魚が食べられるかもしれないし、青イソメでボートが汚れないのがいい」とまみちゃんは言う。そうだね。
ちなみに、釣りをやるのはまみちゃんで、ボートを洗うのは僕なんだけど。
金沢文庫のポイントでトローリングの道具を購入し、ゆったりと3〜4ノットで流してみた。
トローリングの用具を買うときに、いつものかっこいい店員のお兄ちゃんに
「トローリングをしたい」と言って出してくれたのがこれ。
知らずに購入したが、この仕掛けの船のような形をしているものが潜水板というものらしく、引いて船を走らせると、あざやかに水の中に入っていった。
スピードが正しいのか、
コースが正しいのか、
あるいは、流しだす糸の長さは正しいのか、
道具は季節にあっているのか、
よくわからない。
もちろん釣果はゼロだった。だけれども、もし、青魚が釣れてしまったら結構はまるかもしれないね。
いつもとローリングをしているニンニンさんの気持ちがわかったような気がした。
海は、ほとんどボートがいない。釣り船と網を引いている漁船が数隻。後、ヨットが数杯。プレジャーボートはうちのを入れて3〜4隻ほど。
その代わり、たくさん魚網が仕掛けれらている。
海が空いているのと、速度が遅いのと、風がないのとでのんびりすることができた。
日差しも秋が深まっているわりには強く、思いのほか海は気持ちよかった。