今日は一級小型船舶操縦士の学科試験だ。

早めに入っておさらいでもするかと、試験の集合時間よりも早く会場に入った。一番かと思ったら、先客がいた。

座っていた受験生は見るからにヨットマン。しかも金髪だ。
金髪といっても染めたのではない。地毛。白人のヨットマンだ。
着古した黄色のヘリーハンセンのジャケットを着ている。破れたところをパッチしてあったり、樹脂で固めてある。
いかにもヨットがうまそうだ。形から入りやすい僕は簡単に圧倒された。

「おはようございまあす」
と彼から声をかけてきた。流暢な日本語だ。しまった。先を越された。
「おはようございます。」
力なく返事した。ボートに乗っているとなぜかヨットマンに気遅れしやすい。しかも外国人にはどうしても英語で話さなければという意識があるのでつい寡黙になってしまう。

試験前だからちょっと教科書でも見て勉強をと思ったが、彼がしきりに話しかけてくる。無視するのも悪いので当たり障りのないことを聞いてみた。日本語で。
「ずっとヨットに乗っているの?」
「そう。友達がね、モーターセーラー持っているのでしょっちゅう乗っている。免許いらないんだけど、まあとっておこかなあと思って。」
「日本語うまいね。」
「19年日本で生活してる。でも、実はこの1級の教科書や問題、半分くらいはわからない。」
「あ、・・そ、そうだよねえ。」
「でも、4つの答えの中で3つが正しければ間違っているのを選べばいいし、正しいのが3つあれば間違っているのを選べばいい。あやしいのが2つあるときは困るけど」
「確かに。」
「まあ、1点でも基準を上回っていれば合格だから。それ以上とっても意味ないよ」
そのとおりです。参った。一級の免許が取得できたからといってボートがうまくなったり安全意識が高まるわけではない。
彼は「この身体検査は、利益率がいいねえ・・」とか試験のありかたについて皮肉たっぷりにしゃべっていた。

彼は蒲郡のヨットハーバーにいつもいるということなので、今度、遊びに行って声をかけてやろう。

試験の制限時間は70分。14問のうち、3問が海図問題。
作戦は海図問題をとりあえずとばし、運行問題から全部やり、じっくりと海図に取り組むというもの。
あっという間に運行の問題が解け、あせることなく海図問題を解けた。
出たのはほとんどやったことがある問題。問題集を一通りやり、模擬試験を3パターンやった人は恐らく落とすことはないと思う。
逆に、教科書を全部読んでいても問題をやっていない人は危ないかも。

問題を解く→わからなければ教科書を調べるというパターンが最も効率がいい。